44_風を待つ (着物ワンピース 5001)

 これは、きもの?いや、ワンピース?

 確かにワンピース。でも、そこかしこに、きものの気配がちゃんとある。

 左右から打ち合わされた襟元。ツンと立った袖山、マキシ丈は考えてみればきもののデフォルトだ。そして、布のベルトは、ゆるく結んでもいいし、なくてもいい。nonoがはじめて手掛けたという綿100%の生地は、くしゅっと皺になっても、これはこれで様になる。そして、ちゃんとポケットもついている

 nonoの新作「着物ワンピース 5001」は、主催の上田瞳さんの「夏だってきものは着たい、でもやっぱり暑い、それでも着たい…」という思いから生まれた。

 開発にあたり、きものを「きもの」たらしめている要素はなにか?ということから見つめなおしたという。上田社長と、サンプルを作ってはボディに着せ、何か月もそのまま眺めてみたり、また向き合ったりを繰り返した。

 「ポイントは襟でした。左右から打ち合わせた感じ、これこそがきものらしさの中心だったんです」。

 しかし、中心だからこそ難しかった。襟の部分だけを乗せて縫い付けしまっては首が通らない。かといってきものと同じように左右から打ち合わせを作るとどうしても胸元がはだけてしまう。結果、左右の襟を実際に重ねて縫い付け、さらに首の後ろに切ったスリットが生まれた。このスリットが襟を抜いた時の雰囲気を生み、後ろ姿のポイントになると同時に、脱ぎ着もスムーズになった。

 「逆に、こだわらなくてもいいと思ったのが、伊達締めや腰ひも、このあたりの、文字どおり『縛り』の部分です。ここをフリーにしたくて。結局、暑くて苦しいのはここなんです」。

 「きもの 夏 暑さ対策」で検索すると、それはもうありとあらゆる方策が表示される。「なんとしてでも、夏にきものを着る!」という熱意(というか、執念に近い)に圧倒されそうだ。

 かくいうわたしも去年、このありとあらゆる方策を試して、気温35度を超えてもきものを着たクチだ。これはこれでとても楽しかったが、やり切ったからこそ敢えて言おう。

 「やっぱり夏にきものは暑い」。

 暑い時には何を着ても暑い、だからきものでも洋服でも同じ―というのがきもの好きの理屈らしいが、正直、やっぱり無理があると思う。

 「…でなければ!」を、ちょっと手離してみよう。

 「着物ワンピース 5001」は、風が通り抜ける、夏のシンプルな「きるもの」だ。

奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。

岩澤さんのnoteはこちらより
https://note.com/mimihige

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