49_ 窓を開けて ― Gritter 2025

今年もこの季節がきた。

ほころぶ花、揺れる空気、そして静かな命。

2025年のGritterは、期せずして自然をモチーフにした新柄が出揃っている。

新しい窓が開き、風がとおる。そんな気配を感じる柄行きばかりだ。

ダリアと薔薇

やはりゴシック調の柄はGritterには欠かせない。これまで何度もモチーフになってきた歴史ある建造物や彫刻から少し離れ、今回は『花』という有機物がテーマになった。円のかたちをメインに、レース編みを思わせる。

大輪のダリアの間をバラの花が埋めて、華やかでどこか西洋風なかおりが漂ってくる。色によって雰囲気が全く変わるのは生きた花と同じだ。

ゆらぎ

おや?これまでとちょっと雰囲気が違う柄…と思ったら、こちらは奥さまの瞳さんの手によるデザインだそうだ。「輪廻」という語や美濃和紙の雰囲気もヒントになったという。無地感のある柄もあってもいいのでは、との思いもあったと聞く。

ゆらぐのは光か、空気か、それとも水だろうか。インスタレーション作品のようだと思った第一印象は、瞳さんは美術大学で空間デザインを学んだとお聞きしていたのを思い出し、なるほど!と腑に落ちた。

ナイル

満を持してのGritter初のアニマル柄は、ワニ。それも「クロコ」ではなく敢えての「ナイル」。社長の上田さんが「生きたワニも、画像のワニも、さんざん見まくった」上でデザインされた柄だ。

生きものの生々しさにも、「石垣」の硬質さにも寄りすぎない、絶妙なバランスの取れたデザインを、「再現性がないんですよ」と上田さんは笑うが、繰り返し精緻な文様ととことん向き合ってきた経験があってこそだろう。

Gritterの定番ともいえるモノトーンベースのほかに、今回のカラーは、飛び切りのワインを思わせる紫、それに柔らかなオフホワイトの3色が揃っている。

これまで、鋭利でモダンなGritterにこころ惹かれながら、着ることにどこかためらいがあった人にも、きっと似あう色柄があるはず。

わたしはこれまで、Gritterはモノトーンばかり選んできたが、この紫のダリアを着てみたくて仕方ない。

2025新作Gritterきもの一覧はこちらより

奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。

岩澤さんのnoteはこちらより
https://note.com/mimihige

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