「和装用」のバッグは持たない。
わたしがきものに合わせるバッグの基準はこれだけ。
ちょっとした「違和感」こそが、きもの姿を立体的に、奥行きのあるものにすると思っているからだ。
今年の夏、ちいさなギャラリーで出会ったのは、アフリカからやってきたフェアトレードの籠。
畳の目に似たラフな編み方(多分、イグサの一種だと思う)でちょっといびつ。フランスパンが入りそうな横長で、底は楕円形。持ち手には薄い革が割と雑(?)にぐるぐる巻かれていて、付け根に真鍮のリングがひとつ嵌めてある。色や編み方、形もでこぼこと揃わない籠がいくつか並んでいる中で、いちばん横長なものを選んだ。なんとも野趣のある姿かたちだが、本来はワインを運ぶ籠なのだそうだ。見かけよりずっと容量があって、財布にスマホ、文庫本にタオルハンカチ、小さなペットポトルまでと過不足ない。
案の定、どこへ行っても「どうしたの?そのバッグ」と声がかかる。ゆかたや上布といった夏きものにはもちろん、渋い紬なんかにもきっとよく似合うはずという目論見どおりだ。

一方で、小さくても本格的なつくりのジュラルミンケース(モード系ブランドから出ていた)もきものに合わせて持つ。
堅牢な金属の四角い箱は、きものを急に都市の衣服に見せる。nonoのGritterなんて最高に似合う…のだが、このジュラルミンケース、とっても素敵なのだけれど、とにかく――開けにくい!メンドクサイ!結果、すぐに中身を取り出せるちいさなサブバッグが欲しくなるという、はなはだ実用性に欠ける代物で、こうなるともはやこれはバッグというより「アクセサリー」だ。
とはいえバッグには、そもそも「ただの飾り」としての側面がある。特に小ぶりなバッグは、和装洋装問わず、実用性よりも“持っている姿が素敵かどうか”のほうが大きな意味を持つ。
もちろん、しごとの時には「実用一点張り」の大きなトートバッグ。
最近では、軽くてモノが入れやすいバッグを鵜の目鷹の目で探している。
お豆腐みたいに四角いだけ、でも自立してA4ファイルがたっぷり入る手提げはMoMAのショップで見つけた。
他にも、ほぼ三角形なのにやっぱりA4がすっぽり入る目の詰まったキャンバス生地のトートなど、意外なところで見つかる意外なバッグが、意外なほどきものの魅力を引き立てることは、とてもよくあると思う。
あなたが好きになったバッグは、あなたが好きになったきものに、きっとよく似合う。

奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。
岩澤さんのnoteはこちらより
https://note.com/mimihige