59_「着なかった日」

連れ合いを送り出して、ゴミ出しも済ませた。今日は洗濯しない日。夕食は「二日目のカレー」があるから、この時間に下ごしらえは要らない。
2月は「光の春」。庭のロウバイに刺したミカンに、ウグイス夫妻がかわるがわるやってくる。
予定していた午前中の打ち合わせが延期になったので、今編集している冊子の原稿がどこまでそろっているかのチェックと、手元に届いているテキストの下読みが先にできる。それに、準備している自分のホームページの素材を揃えること、確定申告の時期も近づいている。

天気予報によると、今日の京都市中京区の最低気温はマイナス1℃、最高気温は13℃。これなら日中コートは要らない。袷の長羽織に極太毛糸のニットスヌード、それにウールの帽子と足袋ブーツでしのげる。
先に顔と髪にかかる。
わたしは朝、顔は洗わない。代わりに電子レンジでチンした蒸しタオルで顔を拭う。手早く化粧をして、激しくはねている髪にヘアアイロンを当てる。20年くらいベリーショートだったので、いまだにこの手順がまどろっこしい。

古いきものをほどいて作ってもらった二部式のうそつき襦袢、正絹はやっぱりとっても温かい。もとは総絞りだから、さらに温かい。洗える黒の化繊のちりめんに羽根模様の刺繍の半襟がつけてある。厚手の足袋タイツに足袋インナー、長着は黒地の行儀の江戸小紋、ステンドグラス柄の博多半幅にしようか…それとも黒地に銀の、若冲の鶏柄か…。
ここまで考えて、こんな寒い日にきものを着るのが急にめんどくさくなってしまった。
ひとりで事務所へ行って、ひとりでおひるごはん食べて、また事務所で続き。
誰かに褒めてもらいたくて着るわけではないけれど。

アイロンのコンセントを抜いた。
黒のリブニットタートル、黒地に大きな白い水玉のバルーンスカート。体温調節用にドルマンスリーブのカーディガン。ここまで5分。ピアスにリングに時計、ターコイズブルーのコートを着てストールを巻く。ひざ丈のブーツを履いて、家の鍵を閉める。

ステンドグラス柄と鶏柄が、ちらりと頭をよぎる。

奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。

岩澤さんのnoteはこちらより
https://note.com/mimihige

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