
「初ごよみ 知らぬ月日は美しく」
―吉屋信子
まっさらなカレンダーを前にして、いつも思い出す句だ。
若いころは、「知らぬ月日」はただ、わくわくと楽しみなばかりだった。
年を重ねた今、初ごよみに向き合う気持ちは楽しみだけではない。
けれど一方で、重ねた時間なりの経験や知恵もあるはずだと気を取り直す。
きものの楽しみなんて、その最たるもの。
まだ何も書き込みのないカレンダーを、ちょっとめくってみる。
冬、春、夏、秋、そしてまた来る冬。
今年は、何を着よう?
今年は、白襟・白足袋できものを着てみたい。
あまりに王道で、正統派で、わたしには似合わないとどこかで思い込んでいたし、日常的に着るには、色や柄が入っているほうが気楽だ。けれど年齢を重ねて、改めて白襟白足袋の美しさに惹かれるようになった。
髪に白いものが混じるようになったことも大きい。
20年以上、ベリーショートカットで目立たなかったこともあるが、わたしはあまり白髪が出ない体質らしい。それでもさすがに前髪の分け目や、掻き上げた髪の内側を見てぎょっとすることもあるのだけれど、今のところ染めるつもりはない。
ひと筋、ふた筋、白いものの混じる髪は、泥染めの水玉の大島紬にも、黒と白の行儀模様の江戸小紋にも、深い紫の織の色無地にもよく映る。そして、以前より白襟白足袋が、ずっと似合うようになったと思う。
これがきっと、わたしの「冬の白」だ。
みなさま、あけましておめでとうございます。
2026年も当コラム、たのしく続けさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。
岩澤さんのnoteはこちらより
https://note.com/mimihige