52_ 「すき」と「すてき」の間

先日、きもの好きが集まるとある場所に、偶然立ち寄る機会があった。
10月もそろそろ下旬になろうかという日だったが、最高気温は30度をちょっと切るくらい。
場所柄、さすがにきものの人が多い。そんなお天気だから、いでたちも皆さんバラバラだ。
その中に、夏らしいゆかたを着た方をお見かけした。
わたしが思ったのは、今年の夏は暑すぎて、どうしても袖を通す気になれなかった手持ちのゆかたのことだった。

この日、わたしは濃い色のセオαに半幅帯。これでも汗ばむくらい。

わたしがその日着ていたセオαだって、「10月にセオα!?」という目で見ていた人がいるかもしれない。そしてゆかた姿の方も、今日みたいな日はさぞ着心地よかろう。

季節と気温が噛み合わない時代に、「季節感」が大きな魅力であるきものを着るのは、とても難しい。

好きなものを着ればいい。それだけのことなのだけれど、自分の中の「すき」と「すてき」で揺れ動く。

ひたすら自分の「すき」なものに突っ走ると、「すてき」からは遠ざかることがある。
ただの「すき」になってしまっては、せっかくの大好きなきものが「すてき」にならなくなってしまう。

今年は袖を通せなかったゆかた。
来年は「すてき」に着られるといいなと思い、その場をあとにした。

奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。

岩澤さんのnoteはこちらより
https://note.com/mimihige

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