01_ここにある。

いろんなサイトやブログを片っ端からサーフィンしていくと、どんなブランド・メーカーがどんな雰囲気や価格帯のものを作っているか、いわゆる「普段着きもの界」の雰囲気が少しずつわかってくる。が、どれも帯に短し襷に長し。こんなにとんがってなくてもいい…可愛いけどわたしには甘すぎる…ちょっと「和」に寄り過ぎかな…高すぎる無理…。

「Kimono Factory nono」のきものに出会ったのは、界隈では有名なお店のオンラインショップだった。マットな黒地にちょっとラメの入った織りの素材感とシャープな色柄は、モノトーンの多いモード系のブランドにあっても不思議じゃない。価格もだいたい同じくらい。これなら着たい。とっても着たい。きっと自前のサイトがあるはず、と調べてみると、きものだけじゃなかった。帯に羽織に草履、帯締・帯揚げ…。トータルでこういうものを作っている人がいる。こういうものが好きなひとがいる。

やっと見つけた、ここにあった。

最初に見たきものは、綿をベースにした「Gritter」というシリーズだそうで、自分で洗濯できて皺にもなりにくいという。生地の見本を送ってくれるというのでさっそくお願いしてみたら、先方の会社の住所は職場から徒歩圏内じゃないか、燈台下暗しだ。本業は老舗の大島紬のメーカー+問屋で、nonoは新しいカジュアルスタイルのレーベルであることもわかった。

丁寧な手紙と一緒にサンプル生地が届き、すると他のものも見たくなって、恐る恐る(でも厚かましく)会社を訪ねてみた。若い社長ご夫妻とスタッフの皆さんは、飛び込み一見さんの初心者を大切に扱い、似合うものを真剣に見立ててくださった。Gritter以外にも、帯ベルト、黒いレース羽織に、鼻緒が大島紬で天はクロコ型押しのカレンブロッソまで、サイトで見るより実物のほうがずっと良い。端から端まで全部欲しいがそうもいかず、悩んで迷っていくつかを選んだ。

Gritter 「ストーム」、帯ベルト「カレイド」にベレー帽を合わせて。全て私物

後日、仕立てあがったGritterに、洋服の時にも愛用している黒いベレーを被った写真を見た友人は開口一番、「洋服の時とあんまりイメージ変わらへんな」。何気なく口にした一言だったが、心の中でガッツポーズ。大成功だ。

以来、大した顧客にはなれないけれど、数年のおつきあいになる。

昨年の新しいGritterのデザインはさらに精緻になっていた。生地は滑らかでしなやかで、しかもとてもタフ。王将に餃子も食べに行くし、大雨の日の打ち合わせにも平気で着ていく。少しきものに慣れてきても、どこかで自分で自分に「コスプレ?」「目立ちすぎなんちゃう?」とささやく声が聞こえていたのが、だんだん気にならなくなった。わたしにとって、きものが「リアルクローズ」になった一枚だ。

社長の上田さんと奥さまの瞳さんが生み出すきものはどれも、現代の都市生活を背景にして違和感がない。それでいて見事に「きもの」の範疇に収まっていることにいつも驚かされる。これが京都の老舗の底力であり、育ってこられた環境なのだろう。


奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。

岩澤さんブログ「みみひげしっぽ通信」
http://iwasawa-aki.jugem.jp/

> コラム一覧をみる

TEL 075-748-1005

会社代表 075-361-7391

お問い合わせ

〒600-8431
京都府京都市下京区綾小路通新町東入善長寺町143 マスギビル 株式会社枡儀 内(ビル1F奥)
営業時間10:00~17:00(土日祝除く)

アクセス